私たち麻酔科医は臨時収入が少ない。

この臨時収入というのは、バイトとかではなくいわゆる「袖の下」のことだ。

よく言うと「心付け」のことだ。


麻酔科医が患者と接するのは、術前、麻酔中、術後の時だけである。

主治医のように長いこと接するということがない。

つまり、「心付け」される機会が少ないのだ。

手術中、患者の「いのち」を術者(主治医など)から必死で、もじどおり死守しているのに。


いままで数回しか「心付け」をいただいたことがないが、

「心付け」してくださる方には、パターンが在ることに気付いた。

そのパターンは二通りなのだが、

「信心深い」おばあちゃん、

そして、もう一つが「お偉い」あっちの方(頬に傷あり、チンピラではない)

なのだ。

あっちの偉い方も、おばあちゃんも、「心付け」するには理由がある。

ズバリ、「手術がうまくいきますように」だ。

おばあちゃんから貰うなんて以ての外だ!っていう人いるかもしれない。

でもね、もし私がもらわなかったらどう思うだろうか?

私たちへの「心付け」は、「玉串料」と同じなのだ。

だから、「こんなことしなくてもいいんですよ。」と言いながら、

「袖の下」ならぬ「白衣のポケット」に素早くしまうのだ。

ところで、いまでも外科医たちは「袖の下」を頻繁に貰っているのだろうか?